道路建設は、まず住民に聞くことから

前回の記事で、道路などのハードなことに自治体の予算が割かれやすい、と書いたが、

では道路はどのような流れで建設されるのだろうか。

道路建設は市や国の道路交通局の職員が担当するが、

オーベルトーネオ市の場合、ここでも民主主義、そして対話が働く。



まず、道路を利用する人たちを、14グループに分ける。

学童、土地所有者、年金者、母子家庭、救急消防、農家、商店、運輸業者、お年寄り・・・

そうやって、利用者を細かくカテゴリする。

そして、各グループの住民に集まってもらい、

グループ内で、自分たちが求めるのは何かを議論をしてもらう。


(最初のステップが「住民の声を聞く」というところがすでにスゴイ)


各グループで代表者を1人決める。その代表者が、グループ間の話し合いに参加する。

14グループ全体の話し合いでは、代表者が自分のグループの意見を伝えることだけではなく、

他のグループの意見を聞くことも求められる。


「幼稚園で、民主主義を学ぶ」の記事でもふれたが、ここが民主主義の「権利と義務」なのだろう)


集められた各グループの意見を反映する形で、担当である職員がプランを練り直す。

この意見収集−プラン修正を、なんと3回も繰り返す。

いかに住民との対話と合意形成を重視しているかがわかる。


ある道路建設では、なんと2005年からこのグループ対話を始め、やっと今年から工事を始めるそうだ。

そしてこれから3年間のプロジェクトを3段階で工事を進めていく予定。



14ものグループに分けるメリットはいくつもあるが、その1つは自分の意見だけではなく、他のグループの意見もわかることだ。

そして他のグループの意見とその理由も、計画段階から共有され、議論される。

これによって、仮に自分の意見が通らなくても、決まったことへの納得が得られやすい。



ちなみに、大きな意見の対立は、やはり運輸業者と学童との間で起こりやすい。

前者は、より広いスピードの出せる道路を求め、後者はスピードの出ない安全な道路が欲しい。

ここで、経済か安全か、という二択に陥ると対立が生まれてしまう。

解決策は、1本の道路だけを検討するのではなく、その地域の道路ビジョンから考えることによって、

ある道路では運輸業者の意見に配慮する一方で、別の道路で学童の意見を尊重するようにするのだ。



日本では、ある日突然、とんでもないハコモノ建設の話が出てくるが、そういうことはここではない。

スウェーデンでは、自治体の職員は担当する分野のエキスパートであるのが普通だ。

(日本のように、大学の専攻と全然関係ない素人が配属され、2年経ったら異動、なんてことはありえない。)

道路建設のプロジェクトの最初の段階で、道路交通局の担当者がしっかりした事前調査を行う。

もちろん、持続可能な開発であるかどうかを踏まえて検討される。

そういう事前の背景があるため、道路建設の話自体が住民に反対されることはないそうだ。



ではこのようなプロジェクトに、住民はきちんと参加するのか?というと、するのだそうだ。

(なぜ参加するのか?という点は、次回の記事に譲る)


学童グループの場合には、当然子どもだけではうまく進められないから、親が付き添って議論を行う。

救急消防グループでは、なんと勤務時間としてこの議論のミーティングを行うので、きちんと参加できるようになっている。



というわけで、住民参加が前提で、それができるような仕組みも整えられているのだ。

(正確には、参加できるように仕組みを自分たちで作ってきた)



翻って日本をみると、一度決まったら動かない、住民の意見を無視して進むハコモノ計画なんてザラだ。というよりそんなのばかりだ。

とんでもない計画が出てきて、反対活動をさんざんやって、それでも何も変わらないことが多い。

でも、きっと地道な草の根を続けていくことが、必ずこの国の民主主義を次のステージに進めてくれることにつながっている。

<持続可能なスウェーデン協会>の会長・トリビョーンさんも言っていたように、草の根しかないし、

いまこそ、それが求められているのだ。