幼稚園で、民主主義を学ぶ

スウェーデンは、民主主義が発達している。」


と聞いて、どれだけその意味がピンとくる人がいるだろうか。


民主主義って、何だろう?


「選挙」
「多数決」


おそらく、この2つがよく出てくる回答だと思う。


でも、スウェーデンでは、違う。


「相手を受け入れること」
「権利であり、義務」


それが彼らの民主主義だという。


今回のツアーで、あらゆる場面で「民主主義」という言葉が出てきたが、幼稚園の視察でも同じだった。


オーベルトーネオ市にある幼稚園。

ぶらんこ、すべり台、テーブルなど、遊具を始め、倉庫なども含めできる限り<木>を使っている。地面は芝生か砂。


案内してくれた先生と園児たち。


民主主義がどんな場面で出てくるのかというと、例えば給食。

なんと、自分で好きな料理を好きな量だけ取る。

「食べるモノを自分で選ぶ」という権利を自分が持っていることを学ぶと同時に、「他の子たちの分のことも考えて取る」という義務も学ぶのだ。

「えっ!そんなことしたら、好きなものばかり目茶苦茶に取ってしまう」と思ったのだが、そうはならない。
先生が「この人参も、ちょこ〜っとでいいから、食べてみない?」とうまくフォローするのだ。
でも、「どうしても嫌!」とその子が言うのなら、絶対に強制はしない。最終的な権利は、その子自身にあるからだ。


一人一人の成長を追ったアルバム。

このアルバムにはその子の写真や幼稚園での様子などが記録されている。
なんと、このアルバムを僕たち見学者に見せていいかどうか、事前に本人(つまり園児)に了解を得ているのだ。先生だからといって、勝手に他の人に見せてはいけない。ここでも園児の意見を受け入れ、尊重しているのだ。
なお、他の園児が見ようとしても、やはり本人の了解が必要。
(ただし、僕たちは完全に部外者なので、園児の親にも了解をとっている)


ちなみに、このアルバムは小学校に入ると担任にシェアして、その子のこれまでのことをちゃんと連携している。


工作室。

子どもたちの高さに合わせて、椅子やテーブルはもちろん、材料や道具も配置されている。


これは、子どもたちが先生に頼らず自分でできるようにするためだ。先生に言われたことをやるのではなく、自分で考えて、自分で選ぶことが、生活の一部になっている。


中にはノコギリのように、危ない道具もあった。

もちろん工作室に入れるのは5〜6歳の子どもだけだが、きちんと教えてサポートしてあげれば大丈夫。「危ないから」といって取りあげたりしない。道具を使う権利と同時に、テーブルや他の子を傷つけない義務もあることを知る。


一体、どういう考えに基づいて、ここまで子どもの主体性を尊重しているのだろうか。


その理由は、幼稚園には子どもの能力について謳われたボードから知ることができる。

<子どもには9つの能力がある。考える力、試してみる力、体を動かす力、音楽をする力、自然と過ごす力、見る力、社会性を持つ力、話をする力、一人でやる力>


さらに、この園が子どもをどう捉えているかが端的に表現されているボードが飾られていた。


<私たち大人が何かをその子にしてあげようとする時、それはその子が自分でできるのかもしれない。その子が成長する機会を、私たちは奪わない>


いかに子どもの尊厳や権利を大切にしているかが伝わってくる。また、このように幼稚園からしっかりと教育されていることが、この国の民主主義のレベルを土台から支えていることもわかった。


僕自身、3歳の子を持つ親として学ぶことが多かった。
僕はおそらくかなり子育てに時間を割いているほうだと思うが、「この子を尊重する」と「甘やかす」のバランスで悩んでしまっていた。
「権利」のことはちゃんと考えていたつもりだ。でも、「義務」という側面を捉えていなかったからだ。
まずは自分の子育てに生かしていこう、と思う次第だった。



※ツアー中、<相手を受け入れること>や<義務>には、さらに別の側面もあることを学んだが、それはまた別の記事にて。