茂木さんトークまとめ

先週、僕の勤務する会社が主催する大きなイベントが開催されました。


Cisco Connect 2013 - つなげよう、明日を


普段は裏方な情報システム部門ですが、「ITによるワークスタイル変革」をテーマにしたプレゼンや、オフィスツアーのガイド役もやらせていただきました。

こうしてお客様に接する機会はとても貴重な経験なので、積極的に引き受けるようにしています。

もう1つの理由は、会社が推進し、僕自身も実践している「フレキシブルなワークスタイル」は本当にもっと広まって欲しいと思っているからです。

ちなみに僕はいま勤める会社のことを心から尊敬していますが、それについては、また改めてブログにしたいと思います。


で、今回はそのイベントの基調講演でお招きした、脳科学者・茂木 健一郎さんのお話のまとめメモです。

茂木さんは1時間にわたってお話されましたが、一切スライドなし。
でも飽きさせるどころか、聞き手がひきつけられる見事な講演でした。

(そういえば、昨年お招きした大前研一さんもスライドなしでした)

実際のお話のテーマは、「どうしたらイノベーションを起こせるか」でした(と理解しました)。


まず始めに、セレンディピティについて。

ティーブ・ジョブス氏は、「重要なことは、散歩しながら考え、決める」らしく、自宅近くの公園を、何時間も仕事相手と話しながら散歩していたそうです。

散歩すると、脳はDefault Mode Network(DMN)の状態になって、良い閃きが得られやすくなる。

つまり、机でPC画面と睨めっこしていたり、会議室にこもって議論するよりも、視野が広がってリラックスする、というわけです。
重要な決断は、ぐぐっと集中するよりも、心を柔らかくしているときの方が良いらしいんですね。


(そういえば、僕の師匠・藤村靖之さんも、発明を閃くときは「アッチ」の世界に脳内トリップする、と仰っていました。DMNなのかもしれません)


それから、フォントという概念。かつては、コマンドプロンプトしかなかったわけですが、ジョブス氏は昔大学で学んだcaligraphy(西洋書道)とITを結びつけて、パソコンの画面(GUI)にイノベーションを起こしました。

もしITの世界にどっぷりつかっていれば、それは起きなかったわけです。イノベーションというのは、その専門領域とはまったく別のところと結びついたときに生まれる。
その結びつきは、DMNの状態にあると生まれやすい。


というわけで、偶然の幸運を引き寄せるセレンディピティを得るためには、DMNがひとつの鍵なのかもしれない、そして、自分の専門とは別のつながりを持っていくことが大切、というお話でした。



それからもう1つのセレンディピティを得るアプローチとして、「3つのA」をご紹介されました。


1.Action
行動する、ってことですね。行動の目的は、実はなんでもいい、というのです。なぜなら、「AのためにやっていたらBに出会う」のがセレンディピティだからです。
多くの素晴らしいイノベーションは、当初とは別のとき、ふとしたきっかけで起きています。
だから、まずは行動すること。考えているだけでは、セレンディピティは起きないのです。


(去年、師匠に相談に行った時も、やはり「ま、何でもいいからさっさとやってみなさい」とご指導いただいたのを思い出しました)


2.Awareness
気づき、です。人間、毎日数多くのことに気がつかずに過ごしています。そう、人は気がつきにくいのです。だから、心をやわらかくして、 全体をやわらかくみることが大切。
宮本武蔵の「五輪の書」には、「居ついてはいけない」と表現されているそうです。集中してるけど、リラックスしてるのがベスト、だと。
たくさんの敵に囲まれて、剣先を向けられて命を狙われている状態の武蔵が、集中しすぎてはいけない、と言うわけです。
そうして、ベストな状態になっていれば、「Bに気づきやすく」なるのです。


3.Acceptance
受け入れること、ですね。イノベーションというのは、つまり変化です。でも、人間は保守的な存在です。イノベーションを起こしたければ、それを乗り越えなければいけない。



この3つのAの後、もう1つ紹介されたのが、「何がチーム力を左右するのか」。
ある調査によると、どうやらそれはリーダーシップでもなければ、個人のスキルでもなかった、というのです。
では、何がチーム力の決め手になるのか。
それは、Social Sensibilityなのだそうです。つまり、「他人の気持ちがわかる」という「感じ取る能力」です。


僕はいま、仕事とは全く関係なく、「ふくしまkidsデザイン」という活動をしていますが、そこではめちゃ高いパフォーマンスで物事が進んでいます。
思えば、メンバーの皆さんが、心優しくて、慮(おもんばか)る心を持っています。一人一人は能力が限られているし、得意なこともバラバラです。でも、すごいスピードで意思決定され、実行に移されていきます。
Social Sensibilityが鍵、という話しに、とても納得したのでした。



以上、茂木さんのトークまとめ(と感想)でした。