選択肢は、それを作った人が勝つように作られている(ことがある)

あなたのニュース情報源って、何ですか?


ネット、新聞、テレビ、ラジオ、本、講演会・・・。


いろいろあると思いますが、


僕は情報源の1つとして、ラジオあさいちばん「ビジネス展望」ポッドキャストで聞いています。


(生放送は朝6時43分から。僕には早朝過ぎて聞けません・・・。)


このラジオ番組では、いろいろな人が毎朝10分ほど経済問題についてトークしてくれます。


ゲストは玉石混交ですが、特に慶応大教授の金子勝さんや、経済評論家の内橋克人さんは鋭い内容を展開してくれて、いつも勉強になっています。


少し前ですが、7月25日に金子さんがお話された「エネルギー選択肢の問題」がまた秀逸で、おそらく気がついていない人が多いと思うので、ここに書き起しを残します。


政府の選択肢の罠、見破ってみてください。

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政府が示しているエネルギー政策の3つの選択肢。

2030年のおける原発の比率を

・0%
・15%
・20〜25%

として、原発比率に基づいて火力や再生可能エネルギーを決めよう、という話。

これは3.11前の2010年時点で、原発が25%だったことからきている。

しかし、この選択肢の意味が十分に説明されていない。


まず、40年廃炉の原則を守ると、2030年末までに32基が廃炉になる。

すると、残っているのは18基しかない。


つまり20〜25%の選択肢は、この廃炉になった32基の代わりに新しく原発を建てることを意味する。

もしくは、40年廃炉をやめて、老朽原発を動かし続けることになる。

これは果たして原発依存を減らしている、と言えるだろうか?

(※注:2010年の時点では、原発依存度を50%にまで高めようとしてたので、25%でも脱原発、と政府は考えている)



一方、0%の選択肢は、電力会社の廃炉費用を前倒しで積み立てることを意味する。

つまり、ある程度の市民負担をしてまでも、意識的に原発を廃止しよう、ということ。

(※注:負担とは、電気代を上げたり、税金を使うこと)



そして15%の選択肢は、一見すると原発の新規建設をせずに、40年廃炉の原則を適用していくので、最も自然に原発をなくしていくかのように見える

しかしここにはいくつもの問題がはらまれている。


まず原発稼働率は実際には稼働率は70%しかないのに、80%を想定している。

すると、ギャップの10%の分に相当する3基を新規に作らないといけない


また、50基全部を再稼動しているのを前提としている。

となると、中越沖地震で損傷した柏崎刈羽原発、3.11で損傷した宮城県女川原発東海地震が予測されている静岡の浜岡原発など、

そういう原発も全て動かさないと、15%は達成できない。


(盲点なのは、)この15%の選択肢は、40年廃炉を適用してそのまま原発を減らしていくのではない、ということ。


2030年時点で、15%を維持するのか、原発を増やすのか減らすのか再検討する、となっているからだ。

(※注:原発を新しく建てて15%になっていてもよい、という意味)


「真ん中がいい」と選びやすいのだが、政府が提示している15%案とはそういう問題を内在している。


これも脱原発とはいえない。


しかしそれを知っている人は数多くない。

(※注:知っていましたか? 僕は気がつきませんでした)



なぜこんなにわかりにくいのかというと、そもそもエネルギー政策を誰が決めていくのか、国民の選ぶ権利がどう保障されているのかが不明確。


エネルギーミックスの比率だけとか、核燃料サイクルだけとか、CO2削減だけとか、原発政策の個別の政策は分断されて議論されてきた。


しかし、エネルギー政策全体は国会を含めて政府のどこでも議論されていない。
というより、議論させなかった。


結局、経産省という官僚組織が決められるようになっている。欧州諸国と比べても、著しく官僚主導だといえる。



そして国民の意思が非常に反映されにくい枠組みになっている。


例えばイタリアとスイスは原発国民投票をやった。


ドイツは社会学者から哲学者まで多様な人を集め、賛成・反対を半数ずつにして、国会で数時間にわたって議論し、それをテレビで放映して公開討論にした。


日本の今回の場合、国民への意見聴取会をやっているが、それがどういう形で政策決定に生かされるのか、3つの選択肢がどういう風に政策を決めていくのか、手続きが一切明らかでない。


これまでの意見聴取迂回では6〜7割が原発0%支持であったり、パブリックコメントを募集しているが、それをどう使うのか全くわからない。

(※注:つまり、意見を聞くのはこれまで形だけで済ませていた。)


即時か段快適かの時間的な違いはあれど、国民の多くは脱原発


ところが野田政権は原発ゼロを目指すとは明言していない。


政権と国民の向いている方向が離れすぎている。

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政府が提示している3択について僕が付け加えたかったことがあります。


それは、


「2030年時点ではなく今すぐに0%、という選択肢がない」


ことです。


2030年としている時点で、仮に0%の案が採択されても、再稼動を容認できるようになっています。


今回のブログのタイトル「選択肢は、それを作った人が勝つように作られている(ことがある)」は、この「今すぐ0%」を選べないように最初から仕組まれている、ことも指摘したかったのです。





※ご参考までに、最近の金子さんの著書はこちらです。

原発は不良債権である (岩波ブックレット)

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「脱原発」成長論: 新しい産業革命へ

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