広河隆一さんトーク@名古屋

先日、世界一のジャーナリズム月刊誌「DAYS JAPAN」編集長の広河隆一さんのお話「ジャーナリズムとは何か」を聞きに行ってきました。


創刊8周年を迎えたこの雑誌は、新聞やテレビでは絶対に知ることのできない事実を伝えてくれる貴重なメディアです。


ですが、その内容の濃さゆえに、読むのに非っ常にエネルギーを使います。日本や世界の「不都合な事実」を正面から突きつけられるわけですから。寝る前に読むと、マジで眠れず、眠っても夢に出ます。


これほどの雑誌を作り続けるには、想像を超えるエネルギーが必要です。創刊者・編集長である広河さんは一体どんな人物なんだろうか・・・というのが、今回トークを聞きに行こうと思ったきっかけです。


では、以下トークのメモです。


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テーマ「ジャーナリズムとは何か」「チェルノブイリと福島救援を考える」


参加者 およそ120人(会場満席)


(※)は、僕の心の声です。


・僕(広河さん)が呼びかけ人となって、福島原発被災者のための初の保養所を、沖縄県の久米島に立ち上げた
ジャーナリストだが、この取り組みには尋常でない時間と労力を使っている。(※あの広河さんが自分で言うくらいだから、本当に尋常でないのだろう)

ジャーナリストとして被災地に関わって、それで被災した人たちを放っておけない。だから救援もする。救援して、またジャーナリストとしても活動する。(※パパラッチとは月とスッポンだ)


チェルノブイリの救援のときは、まず最初に放射能の食品測定器(重さ200kg)を送った。「何を食べたらいいのか分からない」が現地の声だった。
これは福島のときも同じになった。


・救援というのは、相手の必要に合わせるのであって、自分の身の丈に合わせるのではない。大変なんだけど、そういうものだと思っている。(※自分にできることをする、で収まっている僕には耳が痛い)


・保養地は、本来は国がやるべきこと。でもやらない。かといって待てない。だから市民たちが協力して動くしかない。


・被ばくについては、世界的な権威を持つ医療シンジケートが存在して、原発を推進するIAEAから資金援助を受けている。
ジャーナリストの仕事は、そういう権威の発言の裏を取ること。だが、福島原発事故では、それが一切なされなかった。


重松逸造という人物がいたが、彼はチェルノブイリのとき、IAEAの調査チームに入って「何の病気もない」と発表した。
なぜIAEAは彼を選んだのか?
彼は、広島原爆の米国調査機関ABCC、そして放射線影響研究所の代表を務め、米国にとって(日本にとっても)都合の良い内容の「被ばくの影響」を発表した。(※その後50年以上経って、被ばく者が訴訟を起こし、政府は18連敗して和解に応じた。ABCCは、本当に調査だけしかせず、救いを求めてきた被ばく者たちに全く治療をしなかった。)

さらに重松氏は、イタイイタイ病水俣病でも企業側・政府側につき、「影響なし」としてきた。
そういう人物だからこそ、IAEAは彼を選んだ。


・3.11の後、福島県立大学副学長に抜擢された山下俊一という人は、その重松氏の弟子。

山下氏は医師会に激しい圧力をかけている。その結果、例えば甲状腺のエコー検査結果は、患者には渡されなくなってしまった。3.11以前は渡されていた。
子どもの親にとって一番大切なことは、事実を知ること。つまり子どもの被ばく状態。でも大学や公的機関で調べてもらっても、結果を教えてもらえない。さらに調査は2年ごとしか行われない。
(※まさに今、福島の被ばく医療は、ABCCと同じで、調査しかしない状況で、しかも都合の良い調査方法で、都合の良い発表しかしない)


・彼ら権威の側には、ウソのつき方がある。「病気だけど、それは放射能のせいではない」というもの。
(※病気の原因が、ある時の被ばくが原因かどうかを調べる方法がないから、患者一人一人には有効なウソだ。統計が出たときに、全体ではウソだったと分かるだけ)
例えば、放射性ヨウ素の影響を調べるため、福島住民の甲状腺を調べた。だけど、避難民は汚染度が高いから、調査から外す。ほどほど被ばくしている地域の700人を選んだ。大人350名、子ども350名。それで、子ども1名が甲状腺ガンの恐れがあるだけで、問題なし、と。
しかし、小児甲状腺ガンというのは、本来100万人に1人というほど、ほとんど存在しない病気。たった350人調べて何がわかるのか?そしてたった350人の中に一人いることが、何を意味するのか。


・医者の数値は隠されている。

医者には2種類あって、1つは臨床医。子どもを診察して、例えばなぜこんなに鼻血を出す子どもが例年に比べて多いのか?と思う。
もう1つが研究医。子どもは鼻血を出すもの、と答え、臨床医から集めた統計は公開されていない。
公開しないよう、医師会から医者に圧力がかけられている。医師会には、山下氏から圧力がかかっている。
例え他の都道府県の医者であっても、それは同じ。

僕たちが検査を頼む医者というのは、そういう圧力を受けない医者を選んでお願いする(せざるを得ない)。


・(被ばくの影響は、3〜5年後に子どもたちに出るが、どこに明らかに現れるか?と会場から質問)

福島の子どもは20数万人。首都圏にはおよそ500万人(首都圏人口は4,200万人)。甲状腺ガンは普通、100万人に1人だから、明らかに数字で出てくるのは首都圏だと思う。
(※これまで年間5人だった小児甲状腺ガンが、3年後に50人に増えたら、統計的に明らかになる。それだけの人口を抱えているのが首都圏。)


チェルノブイリと同じく、福島にも保養地が必要。保養地に来れば、お母さんが安心する。気持ちが開放される。すると免疫力も上がる。


・保養地の立ち上げにせよ、何にせよ、最初の1年が最も大変。
2011年の年末にプロジェクトが始まって、実は2月頃に、「もうダメかな」と思った。
だけど、久米島の人たちがものすごくがんばってくれた。「これは久米島のプロジェクトでもあるんだ」って。それで、自分もまたがんばっている。
地元の人たちが、本当にたくさんの支援をしてくれている。


・女性は100%安全じゃないなら危険。
 男性は危険が立証されるまでは安全。
 (※ものすごく納得・・・。)


・私たちは、ずっと足元をすくわれてきた。

原発が危険と言うなら、ディーゼル発電を高台に置くとか対策をすればOKだろう、と。

米軍基地のオスプレイが危険と言うなら、科学者が安全性を保証すればOKだろう、と。


一番底のところで戦わないとダメ。

「そもそも基地・原発はいらない」と。



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以上です。2時間近いトークの一部に過ぎませんが、まとめでした。


あなたは、どう思いましたか?