TechShopで話を聞いてきた

前回、TechShopサンノゼ店にお邪魔した話を書きました。

「ここに来れば、何でも自分で作れる」

これがTechShopのコンセプトです。


(いい意味で)ものすごくショックを受けたので、思い切って社長のJimさんにメールしてしましました。

もちろん会ったことなんてありません。TechShop自体、知ったばかりですから。

でも、せっかくの機会です。メールを無視されたって、何も失うものないです。


すると数日後・・・


返事がきました!


「こんにちは。僕はサンノゼ店の責任者、Raffieです。社長のJimから、あなたと会うように連絡が来ました。僕のお店に来ませんか?」


やった! 支店長にインタビューするチャンス!

そうして、改めてお店に向かうと、さわやか笑顔のRaffieさんが登場。


<彼のFacebookより拝借>


用意しておいた質問を、ズバズバ聞いてみましたが、さすがカリフォルニア(?)。
どの質問にも軽やかにオープンに答えてくれました。

では、ちょっと長いですが、インタビューの内容を大胆公開しちゃいます。


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Q:今日はお時間ありがとうございます。TechShop、素晴らしいコンセプトと設備ですね。早速ですが、このお店はどういうビジネスモデルで成り立っているんですか?

A:うん。フィットネスクラブのイメージだよ。会員費を毎月払つと、それで好きなだけここを使えるんだ。(※)


Q:でも、結構大型の機械もありますよね。使い方は教えてもらえるんですか?

A:道具を使うには、必ず講座を受けてもらうんだ。講師が、「この人は安全に使えるようになった」と判断すると、一人で使えるようになるんだよ。もちろん、何度でも講師や、まわりの仲間に聞いたっていい。


<受付で「本日の講座」が表示>

毎日、いろいろな講座が開かれている。口座によって、値段も違う。


Q:お願いすると、スタッフが作ってくれることもあるんですか?

A:いや。あくまで作るのは本人だ。スタッフは、使い方や作る方法を教えるのが役目さ。


Q:それにしても、これだけの機材。相当な額でしょう?どうやって資本金を得たんですか。

A:もちろん、最初から成功したわけじゃないんだ。創業したのは2007年なんだけど、例えば初めはフランチャイズ展開したんだ。でも、うまくいかなかった。各店舗がバラバラなことをしてしまったからね。だから、いまは直営モデルなんだよ。

一店舗を始めるのに必要な資金は、店舗によっても違うんだ。大体、6〜8億円みたいだよ。
例えばこのサンノゼ店の場合、市のほうからダウンタウン活性事業として、場所提供の話がきたからね。かなり安くついたんだ。

でも、機材は新品を手配しているんだ。中には高いものもあるよ。ウォータカッター、みたでしょう。あれだけで数千万円するからね。
これまでの経験で、お店に必要な機材のセットが何か、わかってきたんだ。だから、最近では新店舗を立ち上げるのが早くなってきたよ。


Q:そういえば、このサンノゼ店、ダウンタウンのいい場所にありますよね。どうして郊外型じゃないんですか?

A:便利な場所にするのが、とても重要なんだ。
だって、仕事が終わってから夜遅くまで作業したいし、週末は一日中やっていたい。
そうなると、お店の近くにレストランやカフェがないと、長く過ごせないのさ。
このサンノゼ店だと、電車の駅にも近いから、結構遠くから来ている人もいるよ。
それから、ショッピングモールに併設したり、大学のキャンパス内にもあるんだ。


Q:大学!それはいいですね。

A:大学と提携してね。もちろん学生は使えるし、近くの住民だってOKさ。
提携先としては、企業もあるよ。フォードのような、車メーカーとかね。


Q:えっ?メーカーと提携してるんですか。だって、メーカーは自前でこういう施設持っているでしょう?

A:そうなんだけど、エンジニアをTechShopに行かせるプログラムがあるんだよ。
社員にとっては、外部の人間とかかわった方が刺激を得られるし、社内で発明したものは全て会社のものになってしまうだろう?ここで作れば、自分のものさ。
会社にとっては、社員がより活発になってくれるなら、歓迎するってわけさ。


Q:そのオープンさは・・・日本企業には難しいです。

A:例えば、社内でパーティーとか飲み会とか、するだろう?
その予算を使って、TechShopに来てもらうのさ。
飲んで交流もいいけど、ここにくればインスピレーションを得られるよ。研修としてもいいと思うんだ。


Q:なるほどね。ちなみに、TechShopで何か発明して、ビジネスにした人もいるんですか?

A:いるよ。例えば、iPadのケースなんだけど、オバマ大統領も使っている、クラシックな本に見えるモデルがある。
あれは、TechShopにやってきて、800ドルくらい費やして会員になって講座を受けて、プロトタイプを作ったんだ。それをベンチャーキャピタルに実物として見せたら、即、ファンドをもらえたんだよ。いまじゃ、数億円企業さ。


Q:それはワクワクする話ですね!
ちなみに、会員は月に125USドル(約13,000円)を払うようですけど、いま何名くらい会員がいますか?

A:サンノゼ店は、800名くらいだね。


Q:えぇっ!800名もいるんですか!?

A:うん。1,000名に増やすのが、今のところの目標かな。
もっと立地のいい、サンフランシスコ店だと、3,000名くらいいるよ。


Q:じゃぁ、会員費だけで、毎月1,000万円の売り上げ。これにプラス、講座の参加費。これが収益ですね。

A:そうだね。講座も、収益の大きな柱だよ。


Q:会員を増やすためのマーケティングは、どんなことをされているんですか?

A:実は、DIYやMakersの世界では、TechShopはとても有名なんだ。知らない人はいないくらい。
だから、以前は「Maker Fair」っていう大きなイベントに、大きく出展していたんだけど、最近はこじんまりしてきた。
それより、提携先を作っていく方に力を入れているよ。


Q:そうなんですね。ところで、結構大型の機械がありますけど、実際使っているんですか?

A:もちろんさ。ちょっとお店の中を歩いてみよう。
例えば、ほら、こういうのも全部ここで作ったんだよ。

<子ども用シーソー>

でかい。


<模型レーシングカー>

無駄にでかい。


<バギー>

本当に動く。



Q:改めて、すごいお店です。これから、海外展開の予定は。

A:あるよ。ヨーロッパと、日本にもね。いま何名かコンタクトをとっているみたいだ。
僕たちは、いろいろ経験して、ここまできた。信頼も培ったし、ファイナンスも固めてきた。
だから、ほかの国でもやっていけると思っている。


Q:貴重なお話、どうもありがとう、Raffie!

A:どういたしまして。いつでもサンノゼ店にきて、何か作っていってね。


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際どい質問も、とてもオープンに答えてくれました。

話していて、「日本でもできるだろうか」と計算しつつ、ウズウズしてしまいました。


普段からこのブログでも書いていますが、僕は「自分で作る」ことは、いま、とっても大切だと思っています。

そういう場を提供し、学生や社会人を刺激しながら収益を出し、さらに仕事を生んで発展している。

TechShop、本当にワクワクするビジネスですね!



※書籍「Makers」でも、TechShopのことが紹介されています。
ここでは、創業者のJim Newtonさんが、かつて印刷業のKinko'sをやっていたこと。TechShopは、それを発展させたモデルだと述べています。納得。