補完電源があるから、電力は足りる?

5月5日に北海道の泊原発3号機が定期検査に入って停止しました。

これで、日本にある全ての(商用)原発は停止したことになります。


再稼働を狙う電力会社は、

  「電力足りないキャンペーン」

  「電気代値上げ」

のセット攻撃を強めるでしょう。


さて、今回は前者について触れます。


「電力は足りない」「いや、足りる」と、いろいろ意見があります。


実際、どうなんでしょうか。



「電力は足りる」の根拠の1つに、

原発を建てるときに、補完電源として火力発電所も建てているから、足りる

というのがあります。


何度か耳にしたことがあって、なんとなく納得していたのですが、

これを機に少し調べてみました。


補完電源の話は、本当なのでしょうか?




結論から言うと、

  「補完電源は確かに建ててあるけど、だから電力が足りるとは言えない

です。




原発には、まさに今回停止した泊3号機のように、定期検査があります。


13か月ごとに一旦止めて、3カ月もかけて検査します。


この定期検査は、<電気事業法>の第54条(※1)で定められている義務なんですね。


でも、検査している3カ月の間の電力はどうするのでしょうか?


仮に100万kWの原発を建てたのなら、定期検査の間、別の方法で同じだけ発電できるようにしないと、足りなくなって停電してしまいますよね。


そんなことにならないように、またしても<電気事業法>です。


その第18条(※2)に、「ちゃんと電気を供給しなさい」と書いてあるのです。


あらかじめわかっている定期検査のために、停電させるのは法律違反になってしまう。

それ以前に、ビジネスも暮らしも困ってしまいますし、

電力会社だって、クレームの嵐に売上減。大変です。


定期検査による電力不足を防ぐために、補完電源が必要になります。


原発のように巨大な発電量を補える発電方法といえば、火力しかありません(でした)。

なので、原発の補完電源として火力発電所を建てたのは本当です。



だから、原発を止めても電力は足りる・・・・・のでしょうか?



考えてみると、3カ月の定期検査の間を乗り切ればよいのだから、原発をもっと作る、という方法もあります


つまり、1基しかなければ同じ発電量をもつ火力発電が必要ですが、5基あればどうでしょうか。


13か月働いて3カ月休む、ということは、稼働率は約80%です。


1基ずつ交代で休めば、常に4基が稼働できることになります。


単純な話、5基あれば、原発原発の補完電源となりえますよね

(実際は原発によって発電量が違うので、もっと複雑です)



原発を建て始めた当初は、確かに補完電源として火力発電所を建てましたが、

54基にもなれば、「原発が全部一度に定期検査で停止する」ことはないので補完電源を建てる必要が無いのです。

(結局は、この想定が間違っていたわけですが)


そしてまたも<電気事業法>の登場なのですが、

第5条(※3)に「過剰に発電設備をもってはいけない」と書いてあります。


原発で定期検査の補完ができているのだから、54機分を補完する火力を建てたら・・・過剰ですよね。



というわけで、残念ながら「電気は足りる」根拠の1つ、

  「補完電源として火力発電があるから」

は、あまり説得力がなさそうです。



でも、「だから電気は足りない」と言っているわけではないですよ。


僕は原発依存度が50%もある関西電力でさえ、

「家庭や中小企業が苦労しなくても足りるようにする」方法を、

うんっと頭を使って、ちゃんと行動すれば、この夏を乗り切れると思います。



だいたい、電気が足りないから再稼働、って、収入が足りないから借金するのと似てますよ。

収入(発電量)に合わせた生活(社会)にしたほうが健全です。


「足りる」「足りない」の議論じゃなくて、「じゃ、再稼働なしで、ある分でうまくやろう」と考えてみてはいかが。



こんなムツカシイ内容を最後まで読んで下さって、どうもありがとうございました。




(※1)電気事業法 第54条
特定重要電気工作物(発電用のボイラー、タービンその他の電気工作物のうち、公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるものであつて、経済産業省令で定める圧力以上の圧力を加えられる部分があるもの並びに発電用原子炉及びその附属設備であつて経済産業省令で定めるものをいう。次項において同じ。)については、これらを設置する者は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業省令で定める時期ごとに、経済産業大臣が行う検査を受けなければならない。ただし、経済産業省令で定める場合は、この限りでない。


(※2)電気事業法 第18条
一般電気事業者は、正当な理由がなければ、その供給区域における一般の需要(事業開始地点における需要及び特定規模需要を除く。)に応ずる電気の供給を拒んではならない。
(※一般電気事業者というのは、東電などの地域独占をしている電力企業です)


(※3)電気事業法 第5条の5
一般電気事業にあつては、その事業の開始によつてその供給区域の全部又は一部について一般電気事業の用に供する電気工作物が著しく過剰とならないこと。