ビジネスに「戦略」なんていらない

20代前半、飽きるほど読んだ<ビジネス書>の類の本。


本当に飽き飽きしているので、(僕が飽きっぽいにせよ)まぁそれなりの数を読んだんですよね。


でも、久〜しぶりに面白そうな本を見つけたので読んでみました。


ビジネスに「戦略」なんていらない (新書y)

ビジネスに「戦略」なんていらない (新書y)


気軽に読み始めてみましたが・・・あまりに鋭い内容で驚きました。


これまで感じていた昨今のビジネスに対する嫌なモヤモヤを、この本が見事に切り開いてくれました。


おまけに、なぜ自分が昔あんなにビジネス書を読み漁ったのか、この本の指摘には心当たりが。


というわけで、特に気になった箇所をメモ。


本を読んでいない人には何の事だかわからないかもしれない。ごめんなさい。

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・書店のビジネスコーナーには様々な「戦略本」が並んでいる。いったい、いつからビジネスが「戦争」になったのか。ビジネスはモノを媒介とする平和的なコミュニケーションであり、戦争のアナロジーで語れるものではない。
ビジネスにおける「負け」の状態は、およそビジネスを志す者にとっては踏むべき意味のある重要なプロセス。勝ち負けという文脈の中でビジネスを考えるというその考え方こそが、すでにビジネスを最低の鞍部で超えるというポリティカルな施行に支配されている証左。


・ビジネスというお金儲けは必ず商品を迂回して達成される。ビジネスは迂回そのもの。その迂回の仕方の中に、ビジネスのつらさも面白さも潜んでいる。「グローバリズム的な思考」に最も違和感を感じるのは、この迂回は忌避すべきもの、無駄なものだと考えられているらしい点。


・ビジネスを「お金」であれ「達成感」であれ、あるいは経営者の自己実現であれ、明確な目的が事前にあるものだとする考え方そのものが、ビジネスをつまらなくさせている原因のひとつ


・「どうやって、儲けるの?」という問いの前に、「何を与えたいのか?」という問いが先行してはじめて、起業の物語はスタートする


・ビジネスの世界でのふるまいを「モノを媒介としたヒトとヒトの精神の交換」と考えた時、非常に含蓄のある、面白みのあるコミュニケーションと感じるようになる。そうなるためには、ビジネスをそれが面白いか面白くないかといった与えられた条件の審査をするレベルで考えず(何か面白いことはないかと探し回るのではなく)、モノを媒介としなければ自分の気持ちを相手に伝えることができないようなねじれたコミュニケーションを面白がれるところに自分をポジショニングする(ビジネスそのものを書き換えてゆく)という遂行的なレベルに自分を置くこと、つまりゲームの参加者であると同時にその発明者になることが必要になる。


・お金持ちに対するリスペクトは、その人間がお金持ちになるまでの苦労や技能、才能といったものに対してのものであって、お金そのものに対するリスペクトではない。お金で得たリスペクトはお金を失うと同時に消失する。


・お金に変わりうるモチベーションは、人と人との関係の中、あるいは人と仕事との関係の中にしか存在しない


・仕事のインセンティブ。1つはお金。しかしそれは馬の前に釣り下げたニンジンでしかない。
人を仕事に向かわせる理由は、それが人間にとっての自然であり、何かのために仕事をするわけではない。
しかしお金のような外部インセンティブ論がかえってビジネスの本質的な面白さを隠ぺいするように機能している。


・人は誰でも他者の評価に対しては不当であると感じるもの。評価は必ずダブル・スタンダードにならざるをえない。


・ビジネスの面白さは、それを遂行することで得られるものがあるからだという等価交換の考え方をやめない限り見えてこない